ユズリハ(譲葉)(ユズリハ科ユズリハ属 常緑高木 雌雄異株)

                 
全国分布本州(福島県以西)、四国、九州、沖縄
県内分布主として低山地域に自生
 

   近郊の低い山でもよく自生しており、極楽寺山、宮島、三段峡等では個体数が多い。
   比較的大きな葉が垂れ下がって付いているのが大きな特徴で、遠くからでも確認できます。
   名前の由来:早春に新葉が出ると1昨年の葉を落とすことから。  


雄花 (2017/04/19 石川県 山中温泉)

 開花時期は4月から5月で、葉の腋から長さ4~12cmの総状の花序を出します。雌雄異株で花は雌花、雄花共に花弁も萼もありません。 雄花には10個ほどの雄しべがあり、薄黄色の葯だけを葉腋に多数付けて花序を出します。葯が破れると花粉が出ますが、その時に葯は紫褐色となります。 雌花も総状でまばらに付けます。雌花には2つに分かれた先端は赤っぽい色をした柱頭を持つ子房があり、その根元に緑色のごく小さな萼片が付いています。 これは雄しべの退化したもので、仮雄蕊と呼ばれます。

雄花 (2017/05/02 三段峡)

 広島ではユズリハ、ヒメユズリハ、エゾユズリハの3種のユズリハが自生しています。 このうちユズリハとヒメユズリハは低山地域でもよくみかけることができ、ヒメユズリハとユズリハは宮島で多く見かけられます。 宮島ではユズリハと共に暖かい地域に分布するヒメユズリハの方が多く自生しているようです。 ユズリハは三段峡や石ケ谷峡などの渓谷に多く自生しています。 一方、エゾユズリハは名前でも想像がつきますが、標高の高い少し寒冷の地域に自生しており、広島では中国山地に多く、 八幡湿原でも比較的多く見られます。他の2種との大きな違いは、エゾユズリハの樹高が1~3mと他の2種に比べかなり低いことです。 また、樹高が低くて葉の大きさや形がシャクナゲに似ているので最初は間違えやすい樹木です。

実 (2018/11/10 三段峡)

 果実は8~9mmの球形で、11~12月に黒く熟し、表面が粉をふいたように白くなります。 果実にはアルカロイドが含まれ中毒症状を起こすので食することはできません。

全体 (2013/05/04 呉娑々宇山)

 ユズリハの仲間のヒメユズリハもユズリハ同様、近郊の山にも自生していますが、私の印象ではヒメユズリハの方が自生数は多く自生場所も広域に わたっているように思います。宮島では海岸近くに自生しています。社叢によく植栽されていますが、自生と紛らわい場合があります。 エゾユズリハとは一部で分布は重なりますが、棲み分けていることが多いようです。

全体 (2017/05/02 三段峡)

 山地から丘陵の林内に自生し、樹高は4~10mになります。 ユズリハの特徴はいくつかありますが、まず長細くて比較的大きな葉が枝先に集まっていて、葉が垂れていることと葉柄が通常は赤いことの2点でしょう。 名前の由来は、春、新葉が出ると古葉が落葉する様子が席を譲るように見えることから付きました。

葉 (2015/02/22 愛媛県 今治 世田山)

 葉は長さ15~20cmで、幅3~7cmと細長い葉で先は尖り、枝先に集まって付き下向きに垂れることが多い。 質は革質で表面は光沢があり、裏面は粉白色を帯び、特に若葉では白い。側脈は13~15対あり、ヒメユズリハの9対前後に比べて多い。 葉柄は長く4~6cmで赤い。普通葉柄は赤みを帯びていますが、緑色のものをアオジクユズリハといい、宮島での報告があります。

葉 (2016/04/02 康午)

 ユズリハとヒメユズリハとの差別化点はいくつかあります。ヒメユズリハはユズリハより葉が小さく、葉の裏を見るとユズリハは白色で細かな葉脈は見えませんが 、ヒメユズリハの葉の裏は淡い緑色をしていて、細かな葉脈(網状脈)がはっきり見られます。花についても、ヒメユズリハの方がユズリハに比べて小さく、 やはり花弁はないのですが可愛らしい感じがします。 この写真はユズリハとヒメユズリハの差別化のために並べています。写真上はヒメユズリハで、下がユズリハです。 また、ヒメユズリハには萼片があることや果序が垂れ下がらないことでヒメユズリハと区別できます。

葉 (2016/03/31 康午)

 

新緑 (2015/06/16 三段峡)

 ユズリハは縁起物のよい植物として正月の注連飾りや鏡餅などに欠かせないものです。 西日本に多く、関東には少ない樹木です。  ユズリハの葉や樹液にはダフニマクリンというアルカロイドが含まれ、かつては駆虫薬として利用されていました。