カヤ(榧)(イチイ科カヤ属 常緑高木)

 
                   
全国分布本州(宮城県以西)、四国、九州
県内分布瀬戸内の島および沿岸部から低山地域に広く自生

 

   瀬戸内の島および海岸から山地まで広く自生し、極楽寺山と宮島には個体数も多い。
   カヤの葉は硬くて葉先に触れると痛いのですが、イヌガヤの葉先は柔らく痛くありません。
   名前の由来:燃やすと煙に薬用成分が含まれ、蚊を追いやる効果があり蚊遣り木と言われた。  


雄花 (2015/05/07 宮島)

 カヤは雌雄別株まれに同株で、花期は4月下旬~5月上旬です。雄花は前年の葉腋に付き、長さ1cmほどの楕円形で淡黄色です。 雌花は新枝の基部に付きますが、緑色の小さな球形の花で目立ちません。

雄花 (2015/05/07 宮島)

 

葉(2018/03/29 宮島)

 カヤの葉は葉身長約2cmの線形で、らせん状に付きますが、側枝ではほぼ平行に2列に並んでつきます。 カヤとモミは葉っぱだけを見るとよく似ています。カヤの葉の先は2つに裂けていませんが、モミの葉先は2つに裂けています。 カヤの葉はちぎると、グレープフルーツに似た香りがあり、香りのしないイヌガヤと異なる。

葉表(2018/10/31 大分県 九重)

 葉の表面は濃緑色で光沢があります。 カヤとイヌガヤは見かけが大変よく似ているので区別は難しいのですが、葉を触ると違いが判ります。 カヤの葉先は固くて鋭く刺状に尖るので触ると痛いのですが、モミ、イヌガヤ、イチイの葉先はカヤほど固くないので握ってもさほど痛くはありません。

実(2018/10/31 大分県 九重)

 果実は緑色の長さ2~4cmの楕円形の核化で、肉質の仮種皮が種子を包み、翌年の10月に紫褐色に熟して緑色のままで落下します。 カヤの実はコレステロールを除く薬効があることが知られています。焙烙で煎って食べると香ばしくて美味しい。 イチイとイヌガヤ及びキャラボクの区別は実の違いによって可能です。イヌガヤの実は若いときは緑色ですが、1年後に熟すと光沢のある 紅みを帯びた渋い紫色になります。 カヤの実は熟しても緑色です。キャラボクとイチイの実は仮種皮が紅くなり、よく目立つようになります。

葉裏(2015/05/07 宮島)

 葉の裏には2列に並ぶ気孔帯があるのですが、この気孔帯の違いを把握すればカヤとイヌガヤの区別が可能です。 カヤの気孔帯はイヌガヤやイチイに比べて最も細いことから区別できます。 カヤとイヌガヤの葉は枝に対して左右に2列に並んでついていますが、イチイの葉は枝に対して普通らせん状に付き、側枝でやや2列に並んで付きます。 キャラボクは不規則にらせん状に付くので他の3種に比べて判別しやすい。

樹皮(2018/03/29 宮島)

 瀬戸内の島でも宮島や生口島の観音山などでは多く自生しており、大木を見かけます。 山地に生え、大きいものは高さ35mになり、樹皮は青灰色で老木になると縦に薄くはがれます。 近郊の低い山で見かけることは少ないように思います。 カヤは高級な碁盤として使われています。カヤの類似種にイヌガヤがあり、この樹の自生地も広範囲にわたっています。