カギカズラ(鈎葛)(アカネ科カギカズラ属 常緑つる性)

                     
全国分布本州(房総半島以西)、四国、九州
県内分布瀬戸内の島から沿岸部の温暖な地域の谷に分布

 

   沿岸部に自生するつる性の樹木で、宮島で観察しました。自生地域は少ないと思われます。
   つる性の植物には一風変わったものが多く、本種も球状の非常にユニークな花を付けます。
   名前の由来:葉腋にカギ状の刺があり、蔓の様に他の植物に絡み付くことから。  


花 (2015/06/30 宮島)

 開花時期は6月下旬から7月上旬で、葉腋から球状の花序(頭状花序と呼ぶ)を1個ずつ出して、直径2cm位の球状に淡い黄色の花をつけます。 花は非常に小さな5枚の花弁を持ち、その中心から花柱が突き出ています。 大竹市前飯谷、宮島、広島市五日市などに自生するようですが、これまでに確認できたのは宮島のみです。

花 (2015/06/30 宮島)

 この樹の特徴の1つは花で、長い花柄の先に細長い花が放射状に付けるので全体としてはボール状になります。 くす球のような感じで、球状に集まり美しく、実にユニークな花です。球状なのですぐに眼に付きます。 (未観察ですが)果実も球状ですが5mm程なのであまり目立ちません。果実は9~10月に熟し、裂開して微細な種子を散布します。 種子は両側に翼を持ち、ラン科の種子に似ています。

花 (2015/06/30 宮島)

 花も鈎も葉の腋から出ますが、出る方向が90度ずつずれています。つまり、葉の平行に付いたら次は葉と直角方向に付きます。 ただし、花が付くところには鈎は付きません。また自然の多様性に触れた気がしました。

葉 (2015/06/30 宮島)

 葉は対生し、卵形で縁は全縁です。葉身長5~12cmの楕円形で、先は伸びて尖り、若葉は赤みを帯びています。

鈎 (2015/06/30 宮島)

 葉の付け根に釣り針形の湾曲した刺状のカギが1、2個付くことが多く、カギが木の枝などに絡むと肥大化して合着します。 鋭く後方に湾曲してリング状になり、これで樹木の枝をとらえて絡み付いていきます。 この鈎は葉が変化したもので、鈎の付き方は規則的に1個付いた次には2個の鈎を付けます。この形態は日本産種で本種のみの特徴です。

鈎 2015/11/06 宮島

 つる性なので他の樹などに絡みついていくのですが、カギカズラには伸長方向とは逆向きに湾曲させた鈎が枝に対生に付いています。 名前の由来は、葉の付け根に鈎が付いていることから付けられました。

 

全体 (2015/06/30 宮島)

 林縁、川岸、伐採跡、倒木後など森林が破壊された環境に自生します。 血圧降下剤として知られるインド蛇木と同じ成分があり、高血圧の薬として注目を集めています。