イチイ(一位)(イチイ科イチイ属 常緑中高木)

全国分布 北海道、本州、四国、九州
県内分布 東部の中国山地の頂上付近に稀に自生

   広島県では中国山地に自生しますが、個体数は多くありません。
   鳥取県大山で見られるダイセンキャラボクの仲間で、可愛い赤い実を付けます。
   名前の由来:優れた木材なので、昔は最も高い位階である「正一位」の人物が
   使用する笏(しゃく)をイチイで作ったから。
   他説:イチイの木材が赤味が強い色なので、「一番の緋色」イチヒから。


実(2014/11/08 北海道 阿寒湖)

 (未観察ですが)雌雄異株まれに同株で、開花時期は3~4月です。葉の付け根に花を付けます。 雄花は淡黄色で9~10個の雄しべが球状に集まっています。 雌花は緑色で、胚珠は1個、数対の鱗片に被われており、胚珠の基部には環状の仮種皮があります。 果実は長さ約5mmの球形で、花の後肥大して9~10月に熟します。熟した果実は肉質の赤い仮種皮に被われますが、先端は開いています。 この赤い実(仮皮種)は甘くて食べることが出来ます。ただし、中の黒い種はアルカロイドのタキシンが含まれていて有害です。

実(2014/11/08 北海道 阿寒湖)

 イチイの仲間の大山キャラボクは鳥取県の大山山頂付近しか自生しておらず、 しかも群落を形成しています。大山キャラボクの実もイチイ同様秋には真っ赤に熟し見事です。

葉(2012/04/16 平和通り)

 葉は、長さ約2cmの線形で、通常キャラボク同様らせん状につきますが、横に伸びた側枝ではほぼ左右に2列に並びます。 表面は濃緑色で光沢があります。葉の裏面の気孔帯は薄い緑で目立ちません。 イチイの葉は先の尖った所を触っても痛くなく、カヤやイヌガヤに比べて葉が短く柔らかい。 イチイの特徴は秋に付ける赤い実ですが、実のないときは葉の特徴によりカヤなどとの区別が可能です。

全体(2012/04/16 平和通り)

 亜高山帯や寒冷地の深山に生え、大きいものは高さ20mになります。樹皮は赤褐色で縦に浅く裂けます。 シラビソ、コメツガ、エゾマツなどの針葉樹と混生します。 イチイの名の由来は昔の官僚制度と関係があるようです。飛騨山地の位山(くらいやま)にあった樹木から高官が用いる笏(しゃく)を作り、 朝廷からある高官が「一位」の名を賜ったことから付けられたようです。この樹木がイチイの樹です。