全国分布 | 本州(関東地方以西)、四国、九州、沖縄 |
県内分布 | 主に瀬戸内の島および沿岸部に自生、低山地域には少ない |
開花時期は4~5月で、花序は花嚢と呼ばれる花序の軸が藻の様に丸く袋状になった内側にびっしりと付きます。 雌雄異株で、雄株には雄花嚢、雌株には雌花嚢を付けます。雄花嚢の中には雄花と虫えい花が混在し、雌花嚢の中には雌花だけがあります。 虫えい花は、花柱が短くイヌビワコバチが花柱に産卵管を差し込んで産卵し、子房の中で幼虫が育ちます。 しかし、雌花の花柱は長く蜂が子房に産卵できないため虫えいにならず実を結びます。
秋、10~11月頃、雌花嚢は直径約2cmの球形で、黒紫色に熟し食べることができます。雄花嚢は固くて食べられません。 花嚢は初めは緑色で徐々に赤みを帯びていき黒く熟します。 イヌという接頭語は本物に似ているが役に立たないなど悪いイメージで付けられることが多いようです。 しかし、イヌビワは決して味は悪くなく美味しいとのことです。 雄嚢と雌嚢はほぼ同形なので通常中を見なければ雄か雌かの区別はできません。 ただし、雄果嚢は果嚢の基部が細長く伸びることが多いのですが、雌果嚢はあまり伸びません。この点で雌雄の区別ができます。
葉は互生し、やや大型で葉先が次第に狭まって尖ります。葉の基部は幅広く、縁は全縁です。 果実は正確には果嚢といいますが、この形がビワの実に似ているから付けられました。
沿海地域から低山の常緑樹林内や林縁に生え、高さ約4mになります。 名前はビワと付いていますが、イチジクの仲間(クワ科)で、花は実(花のう)の中に咲いていて外からは見ることが出来ません。 花が見られないので観賞に値しない樹ですが、雌株の花のうがたくさん付いた樹では、花のうが黒く熟すまで緑色から 淡い紫色、赤色と、様々な色の花のうが見られ、その色のグラデーションは一見の価値があると思います。
黄葉する樹は多いのですが、イヌビワは里山で黄葉する代表的な樹木の1つです。