全国分布 | 本州(東海地方以西)、四国、九州 |
県内分布 | 瀬戸内の島から沿岸部、時に低山地域にも自生 |
ニレの樹と言えば小説の題材に使われたりして、良いイメージがあるのですが、それはアキニレではなく、ハルニレのことだと思います。
ハルニレは、比較的標高の高い寒冷地に多く自生しており、奥日光や北大のキャンパスでハルニレの巨木が多く見られました。
アキニレは山地にも自生しているのでしょうが、これまで多くは見かけていません。また、大気汚染に強いので近年、公園などに植栽される
ようになったようです。別名としては、材が堅いので「イシゲヤキ」、河原によく生えるので
「カワラゲヤキ」などとも呼ばれます。開花時期は9月頃で、本年枝の葉腋に淡黄色の両性花が束生します。
果実は翼果で、11月頃淡褐色に熟します。翼には顕著な網状の脈があります。果実の翼は長さ1cm程度でが、風によって飛ばされて散布されます。 1つの果実の中に、小さな種子が2つ入っており、秋になって葉が落ちてもなかなか果実は枝から離れなません。 冬の木枯らしが吹く時になってようやく少しずつ果実は枝を離れて散布されます。
アキニレの葉は互生し、葉身長2.5~5cmと落葉樹にしては小さいのが特徴です。 また、春始めに出る葉は小さく、枝先に出る夏の葉は大きい点も特徴です。 葉は革質で両面とも短毛があり、さわると著しくざらつきます。葉の基部は左右で形が異なり、枝側が広い形状をしてます。 縁には鋸歯があり、側脈は7~12対で鋸歯の先端付近まで到達します。
アキニレは名前が示すように、秋に花を咲かせる珍しい落葉樹です。 秋に花を付けることが大きな特徴ですが、落葉樹にかかわらず、葉は硬くて厚みがあり、表面には光沢があります。 ハルニレに比べて葉は厚みがあります。アキニレの葉はきれいに揃った鋸歯を持っていますが、ハルニレは重鋸歯です。
冬芽は、ニレ属でよく見られるように、ジグザグになる傾向が高いのですが、明瞭でないこともあります。 冬芽は卵形で、あまり尖らず、冬芽の下の葉痕がかわいらしい。
樹皮は、成長とともに縦に割れ目が入り、不揃いな鱗片状に剥がれ、まだらな斑紋が残る特徴的な樹皮です。 剥がれた跡は褐色の皮目が目立つようになり、少し赤っぽく見えるのでアキニレの樹であることが確認できます。