アカマツ(赤松)(マツ科マツ属 常緑高木)

全国分布 北海道南部から屋久島
県内分布 沿岸部から中国山地まで広く自生

   広島県は全国でアカマツ林の面積がもっとも広く、以前はマツタケの生産全国一でした。
   山に自生しているマツは殆んどアカマツで、クロマツは沿岸部に多く自生しています。  


雄花 (2017/05/11 経小屋山)

 花期は4~5月で、雌雄同株です。雄花は長さ約1cmの円柱状で緑黄褐色を帯びており、新しい枝の根元に多数つけます。 雌花は新枝の先端に紫がかった花を2~3個付けます。 雄花からは大量の花粉が放出されますが、マツの花粉で花粉症が起こることは多くありません。花粉が放出された後、雄花は脱落します。 4月の終わり頃から5月の初じめにかけ、大量の花粉を放出します。

雌花 (2015/04/09 古江)

 アカマツの雌花は、紅紫色で新枝の先端に2~3個高い枝先に形成されることが多く、小さくて目立ちません。 アカマツの花は、クロマツよりやや遅れて咲きます。 一方、クロマツの雌花は赤くてよく目立ち、2~4個形成されます。

雌花 (2015/04/09 古江)

 

新枝 (2015/04/09 古鷹山)

 雌花は紅紫色で新枝の先端に2~3個付けますが、この写真ではまだ雌花はついていません。 アカマツの雌花は、高い枝先に1~2個だけ形成されることが多く、小さくて目立ちません。 一方、クロマツの雌花は赤くてよく目立ち、2~4個形成されます。

実 (2016/09/01 柚木山)

 果実は球果(松ぼっくり)で、4~5cmの卵形です。1年目の球果(松ぼっくり)はまだ緑色で固く閉じていますが、2年目になると球果は茶色になり、 ほぐれてきて種を出すようになります。 秋の晴天時にマツカサの鱗片が開き、種子が風によって散布されます。種子は光発芽の特性があり、光が当たる場所で発芽しやすい。 成長にも強い光が必要で、禿げ山のような林床にまで十分に日光が当たる場所で発芽・成長できます。

葉 (2017/05/11 経小屋山)

 葉は2葉性で、長さ7~12cmとクロマツより短く細い。先端は尖っていますが、クロマツと違い柔らかく先を触っても痛くありません。 クロマツは先端が硬く、触ると痛いです。葉はクロマツの方が長く太い。これらの特徴の違いからクロマツは別名「雄松」と呼ばれ、赤松は「雌松」と呼ばれます。 アカマツはブナ帯以下の標高の山地で尾根筋や岩山など、土壌のやせたところや乾燥地によく自生します。広島市近郊の山にもよく生えています。

樹皮 (2014/03/27 宮島)

 名前の由来は、名前が示す通り樹皮が赤っぽいことから付けられたようです。クロマツに比べて樹皮は明らかに赤っぽい。 樹皮は深い割れ目が生じ剥がれることが多い。 マツの寿命は長く、寒さにも強く、年中緑色をしていることから、正月の門松として利用され、”福を待つ”から付けられたとされています。

 

全体 (2014/09/09 岳山)

 マツは針葉樹なので光を受ける面積が少ないため、他の樹との生存競争に勝つためには他の樹が好まない山の尾根や海岸などの栄養価の低いやせた土地に多く 自生しています。実際に山に行くと、尾根筋で岩石の多い地域や花崗岩質で乾燥地のやせた場所に多く見られます。 アカマツは森林の放置とマツ枯れ病により、急激に個体数を減少しています。 広島県でもこのマツ枯れが多くの山で見かけます。その病原はマツノザイセンチュウで、この虫を媒介する運び屋がマツノマダラカミキリであると考えられています。 マツ枯れのその他の原因として、植生の遷移や里山の管理放棄、環境汚染や地球温暖化などがあげられます。 病原であるマツノザイセンチュウは、アメリカのものと遺伝子的に同一であることがわかっており、第二次世界大戦後の米軍進駐後にマツ枯れ病が発生した ことと符合しています。日本のマツ類はこのアメリカ産のザイセンチュウに抵抗力が弱く被害を受けやすいのです。